2019.06.302019年 ヨーロッパ紀行 第31話 ~モルダウ川の彼方~
2019年6月30日(日)
(In Prague Czech Republic Date 19 May 2019)
19:00からのミラーチャペルで行う「弦楽四重奏」の演奏開始の時間まで、約3時間…
草さんと一緒に、チェコのタロット探しの冒険の始まりです。

プラハの街の景色の中に溶けていくように、草さんと二人で、裏道の路地に入っていきます。
タロットカードを販売しているようなマニアックなお店は、少なくとも人目につくような大通りにはない… という、ハンガリーでタロットカードを見つけた時の草さんの経験からです。
本当の事を言うと、僕は体調が完全な状態ではありませんでした。
どうも、前日のブルノにいたあたりから、本調子ではないのです。
イスクラ衛益顆粒を飲んでいて、体の免疫はついているはずなのに、それ以上に無茶をし過ぎているんですね。
大体、今日の朝だって、缶ビール飲んでいるし(笑)
昨日はそうでもなかったのですが、ここにきて、鼻水や咳が出だして、それをこらえながら、涙目になっていました。

それでも、今はどんな気分かといったら、ものすごく楽しいです!!
夢を見ているような楽しい出来事が、体調の悪さを超えてしまっているんです。
本当、この場所に来て良かった…
タロットが販売されていそうなお店といえば、やっぱり、書店です。
日本では、タロットカードは、東急ハンズなんかのレジャー用品売り場や、書店の占い関連のスペースに置かれていますが、チェコでも、きっと同じはず…
決して、誰もいないうらびれた暗くて寂しい場所に、水晶玉を手にした怪しげな老婆が住む一軒家があって、そこで黒魔術の道具や手引書と一緒に、タロットカードも販売されている… という訳ではないと思います(笑)
いや… でも、もしかすると、そんな作り話のような事だってあるのかも知れない…
それくらいに、この街は、おとぎ話の世界のようなファンタスティックな雰囲気に包まれていました。
ブラハの街を、気の向くまま、2人で歩き回りました。
草さんは、素敵な景色を見つけると、その風景の構図にものすごくこだわりながら、写真を撮って、インスタにアップします。
どうりで、草さんのインスタは、僕の頂き物ばかりアップしているインスタと違って、写真がめちゃくちゃ芸術的な訳です。
道を進んで行って、分かれ道になっていて、どちらに行って良いか迷った時には、交代交代で、どっちの道に進むか決める事にしました。
全ては天に任せて…
1時間余り、街をあちこちフラフラしたものの、未だにタロットの片鱗は見つけられないまま…
それどころか、書店さえも見つけられず、ようやく書店を見つけたと思ったら、休業日だったり、営業時間がちょうど終わった所だったりと、思うようにすんなりとは、いきませんでしました。
「川を渡った向こう岸に、行ってみましょうか」
草さんが、そう言いました。
僕らは、カレル橋を渡って、モルダウ川の向こう岸に行く事になりました。

この橋塔を入った所が、プラハの名所・カレル橋…
そして、その下を流れているのが、かのモルダウ川です。
この橋塔、一見すると、色や形がプラハの街に入った最初に見た「火炎塔」に似ていて、間違えそうになりますが、別の塔です。
さすが「百塔の街」のプラハ…
そう言えば、携帯が見つかるかどうかを、草さんのタロットカードを借りて引いた時、「塔」のカードが出てたっけ…
ふと、そんな事を思い出しました。

橋塔のトンネルを入ると、思わず声を上げたくなるような、素敵な場所でした。
広い橋の両側には、露天商やたくさんのアーティストやミュージシャンが立ち並んでいます。
橋を渡っていると、松里さんとヒデ君とKさんが歩いていて、挨拶しました。

そして、橋の向こう側に目をやると、そこはマラー・ストラナ地区…
たくさんのお城のような建物が立ち並んでいて、まるで、おとぎ話に出てくる王様の宮殿です。
「今夜はクラシックを聴いて、明日は、みんなで川の向こう岸にあるお城に行ってみようよ」
クラシックコンサートのチケットを買った時、野尻泰煌先生がそうおっしゃったのを、思い出しました。
明日は、この夢の景色の中に入っていくんだ…
草さんは、橋の所で、販売している美しいシルバーやクリスタルのパワーストーンに魅入られて、その露天商の人に、何か交渉をしているようでした。
やっぱり、英語ができるというのはいいなあ…
そんな思いに駆られながら、橋から下を眺めてみました。
滔々と流れるモルダウ川…

“ボヘミアの川よモルダウよ 過ぎし日のごと今もなお”
“水清く青きモルダウよ わが故郷を流れ行く”
“若人さざめくその岸辺 緑濃き丘に年ふりし”
“古城は立ち 若き群れを守りたり”
中学生の時に音楽の授業で歌った「モルダウ」…
このスメタナのモルダウは「我が祖国」という交響詩の中の第2楽章です。
橋から川を見ていると、ゴホゴホ咳が出てきましたが、モルダウ川のせせらぎに、全部かき消されていきました。
草さんと一緒に、橋を渡った所にあった書店に入ってみましたが、そこでもタロットカードを見つける事はできませんでした。
その後、川沿いにある小さなお店のあたりを、ぐるっと散策してみました。
「中々、タロットコードが置いてあるお店はないものですね…」
草さんと、お互いに顔を見合わせました。
まあ、適当に歩き回って見つかるほど、タロットカードはメジャーな商品ではありません。
タロットカードというもの自体、かなりレアな商品ですし、だいたい、こういうものを欲しがる人というのも、かなり特殊です。
そう考えると、草さんがハンガリーのブダペストの街を、少しぶらついただけで、タロットカードがあるお店を見つけてしまったという事が、ものすごい奇跡だったのです。
1時間半ぐらい、あちこちを歩き回ったものの、結局、目的のタロットカードは見つける事はできませんでした。
しかしながら、当初の目的は達成できなかったとはいえ、素敵な思い出に心が満たされています。
モルダウ川を、ゆっくりと見る事もできたし…
そろそろ戻らないと、クラシックの時間に間に合わなくなってしまいます。

橋の所で演奏をしていたストリートミュージシャンの人達が、異国情緒が満載の曲を演奏していました。
「まだ少し時間もあるから、どこかで夕食を食べてから、コンサートに行きましょう」
二人でファミレス風のお店に入って、そこで、スパゲティーを注文しました。
とはいえ、実際にお店の人と会話して、注文をしてくれたのは草さんで、僕一人だったら、どんな食べ物がいくらで食べられるかという事さえ分からず、スパゲティーを注文する事さえも、できなかったと思います。
「ドリンクは、コンビニで買って飲みましょう」
草さんは、そう言って、こう続けました。
「みんな、外国に来ると、無駄な所にお金を使いたがるんですよ。クラシックコンサートに行くとか、そういう価値のある事にお金を使うのなら、多少のお金が掛かっても意味があると思うんですけど、コンビニで安く売っているようなものを、わざわざレストランで10倍以上のお金を払って注文するくらいなら、その分のお金を、もっと価値のある事に使ったらいいと思うんですよね」
さすがは、草さんです。
これが、経営者でもあり実業家でもある、草さんの真骨頂だと思いました。
タロットカードは見つけられなかったけれど、草さんと一緒に行動をして、とても楽しくて有意義な時間を過ごさせて頂きました。
さあ、魅惑のクラシック・コンサートの開演の時間まで、あとわずか…
草さんと一緒に、会場のミラーチャペル・クレメンティヌムへと急ぎました。
<旅の教訓31>
当初の目的が達成できなくても、そのプロセスにおいて得られるものに価値がある。
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