2019.06.222019年 ヨーロッパ紀行 第23話 ~試練は、前ぶれもなくやってくる~
2019年6月22日(土)
(In Brno Czech Republic Date 17 May 2019)
いよいよ、3日間過ごしたオーストリアの地を、離れる時が来ました。
泰永会の8名のメンバーに、横澤様も同行してくださって、総勢9名で、このウィーンに来るのにも使った、レギオジェット(Regiojet)の高速バスに乗って、今度はチェコの地へと向かいます。
オーストリアもチェコもEU加盟国ですから、バスに乗る時にパスポートさえ見せれば、国境をまたいで行く事ができます。
たくさんのウィーンの思い出を、心に抱いて…
次に行くチェコという国は、いったいどんな所なんだろう。

バスの窓から、外を見ると、見渡す限りの緑…
緑、大好きです(^^)
よくよく振り返ってみれば、日本を離れてから、もうすでに1週間近くが過ぎようとしています。
毎日毎日が新鮮で、見た事のない景色の中で、楽しいイベントが山のようにあって、時間の経ち方が、本当に早いです。
ところで今回の旅行では、不思議な事にメンバーのほとんどが、この旅行中に「物をなくしたり、落としたりする」というような体験をしていて、いつもみんなでその話題で盛り上がっていました。
いつもなら、絶対に物を失くしたりしない野尻泰煌先生までが、モスクワ空港でパスポートを落としたりしているのです。
草さんは、飛行機の中で塔上チケットを失くし、高天麗舟先生はハンガリーの温泉で、おみやげに買った国旗を失くしてしまいました。
僕は成田空港に着くまでの電車で、大切な帽子を忘れてしまいました。
唯一、そういう失敗が一切なかったのが相模泰生先生だったのですが、ついに、ウィーンの美術館でチケットを失くし、そのパーフェクトの記録が敗れて、我々の仲間入りをしました(笑)
とはいえ、どの失くし物も、親切な人が拾って届けてくれたり、すぐに気づいて取りに行ったりで、難なく戻ってきています。
そういう意味では、やっぱりみんな、天に守られているように思います。
まあ、こういうのは、インフルエンザの予防接種みたいなもので、よっぽどひどい事にならなければ、それがかえって良い事もあります。
この手のトラブルは、完全な不可抗力で起こる事もありますが、自分の中の改めなければいけない習慣や行動パターンが呼び寄せる事も多いですから、それに気づいて、そこを改善しておけば、逆に薬にもなるという訳です。
一度そういう失敗をしておけば、そこで気が引き締まりますから、二度目の失敗は起こしにくくなります。
僕も、帽子を忘れた時以来、常に自分の持ち物に目を離さないようにしていますし、忘れそうなものは、あらかじめスーツケースの中にしまって、出さないようにしています。
半年前に奈良県の旅行で、携帯電話を忘れた時もそうでしたけど、あらかじめ自分の陥りやすい傾向をわかっていれば、失敗は防げるものです。

窓辺を見ると、相変わらず見渡す限りの緑です。
のどかな旅だなあ…
しばし、感慨にふけりました。
バスの座席の狭いスペースでは、さすがにパソコンを広げて、講座の準備を進める仕事は、できません。
こういう時ぐらい、のんびりしよう…
そう、心に思いました。
例によって、ある地点を越えた所で、いきなり僕の携帯に、KDDIからの海外通信のメッセージが数件入りました。
国境を越えて、チェコの国内に入ったようです。

ある程度の年齢の方は、「チェコ」という国名よりも「チェコスロバキア」という国名の方が、しっくりくる人もいるのではないかと思います。
実は僕もその一人で、小学生の頃は、ピクチュアパズルで遊んでいた影響もあって、日本の都道府県や、世界中の国の名前をやたらと記憶している変わった子供でした。
チェコスロバキアが解体されて、チェコとスロバキアになったのは、1992年の事だから、かなり昔なのですが、僕の中には相変わらず、小学生の時覚えたチェコスロバキアという名前の印象の方が、強いんです(笑)

ふと窓辺を見ると、古城が見えます。
ハンガリーのお城とは、ちょっと違って、こっちの方のお城は、可愛らしい感じがします。
目的地のブルノまでは、まだ時間もあるなあ…
そんな事を思いながら、座席の前のディスプレーをいじくっていると、「チェス」を発見しました。

そして、この時のチェスが、まさか、今回の旅行最大のトラブルを呼び込んだ元凶になるであろう事は、この時は夢にも思いませんでした。
コンピューターのチェスなんて、どうせ弱いだろうから、きっと、気持ちよく勝たせてくれるだろう…
そう思ったのは、とんでもない間違いで、これが半端なく強い…
意外に思われるかもしれませんが、僕は、かなりの負けず嫌いで、一つの事に夢中になると、他のものが一切見えなくなって、後先考えずに、とことんまで、のめり込んでしまいます。
また今回も、その僕の悪い部分が、出てきてしまいました。
絶対に勝つまで続けてやる… と、いつしかトイレを我慢しながら、のめり込んでいきました。
負けると悔しくて、何度も何度もトライして、ようやく、かろうじて勝てるかも知れないような場面まで来ました。

ちなみに、このチェスの写真は、隣りの席にいた松里さんが撮影してくれました。
このチャンスを逃したら、多分もう、このコンピューターには勝てない…
次の手を指す前にトイレに行っておこう… と、チェスの駒の配置を頭に思い描きながら、バスの車内トイレをノックする事もなく、ドアを開けてしまったのです。
そのトイレは男女兼用で、まさかとは思っていたのですが、中から鍵が掛けられる仕組みもなくて、運悪く、中に入っていたのが女性でした。
これは、完全に僕の不注意でした。
しばらくの間、ちょっとした騒ぎになってしまいました。
この話をブログに書くのも、はばかられたのですが、これを書いておかないと、この後のさらなる大失敗が、どうにも説明できません…
動揺を隠せないまま、真っ青になって席に戻って、当然ながら、コンピューターとのチェス対戦は、あっさりと負けてしまいました。
もちろん、事故だとみんなわかってくれたので、特に問題にはならなかったのですが、ものすごく気まずい思いで、頭が真っ白なままバスを降りて、みんなでアパルトマンの方へ歩き始めた時、ある事に気付きました。
携帯電話を、バスの中に忘れてしまった!!
その事をみんなに伝えて、大急ぎでさっきのバスに戻ろうとすると、草さんも、一緒について来てくれました。
さっきのバスは、まだそこにはいてくれたものの、車内はすでに、次の乗客でいっぱいになっています。
自分が座っていた席さえ、動揺でしっかり思い出せなくなってしまい、そこらあたり中「エクスキューゼモア…」と言って、必死に席の足元とか、窓辺の下とかを見たのですが、携帯電話はどこにも見当たりません。
頭の中がパニックになって、ここはチェコなのに、なぜかフランス語を、意味もなく使っていました。
草さんは、そのバスのガイドさんに、携帯電話がバスの中のどこかになかったか… と尋ねてくれたのですが、「ない」という答えでした。
突然の衝撃に、頭が真っ白になりました。
人生の中の試練というのは、何の前ぶれもなくやってくるというのは、本当の事だと思いました。
あの携帯電話は、かなり性能の良いIPhoneなので、買い直すと、相当なお金が掛かりますし、外部に漏れてはいけないプライベートの電話番号や、たくさんの僕のプライベートのデータが入っていました。
その事だけでも十分に問題でしたが、何よりあの携帯の中には、絶対に失くす訳にはいけない、今回の泰永会のレセプションの模様を撮影した写真が、たくさん入っていたのです。
せっかく撮った写真が消滅してしまったのであれば、今回のレセプションを記憶に残せなくなってしまいます。
「バスの中で見つからなかったのだから、もしかすると、上着のポケットとか、鞄の中に間違えて入れてたりとか、そういう可能性だってありますよ」
そう言って、草さんが、僕を励ましてくれました。
携帯電話を、乗り物の中に忘れるという失敗は、半年前にも経験したはずなのに、また同じ事をやってしまった…
自己嫌悪の気持ちにどんどん蝕まれて、いっそ死んでしまいたい… という衝動に襲われました。
かろうじて、気持ちを冷静に切り替えて、「もしも、この状況になったお客様が鑑定にいらしたら、どうアドバイスをするだろう…」と考えてみました。
「今こそ、自分の気持ちを建て直せるかどうか… その試練を与えられているんだ。こんな所で、気持ちまで、不幸に流されてたまるか…」
そう何度も気持ちの中で繰り返して、なるべく明るい顔でみんなと接しよう… と心に決めました。
草さんに励まされながら、心の中で「絶対に何とかなるし、何とかする」と呪文のように唱えつつ、みんなの所に戻りました。
<旅の教訓23>
一つのトラブルが起こった時には、すぐに気持ちを切り替えて、トラブルが連鎖するのを防ぐ。
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