2019.07.062019年 ヨーロッパ紀行 第34話 ~チェコ共和国一人旅・ブルノ編~

2019年7月6日(土)

 

 (In Brno Czech Republic Date  20 May 2019)

 

 プラハ本駅(Praha hlavní nádraží)から、予定通りに、7:50発のEC275の列車に乗って、まずは胸をなでおろしました。

 この電車の中で、2時間半の時間を過ごせば、その時は、無事にブルノの地に到着しているはず…

 

 それにしても、人間の思い込みというものは、本当に恐ろしいものだと痛感しました。

 

 僕は、プラハマサリク駅(Praha Masarykovo nadr)を、すっかり、目的のプラハ駅だと、勘違いしていました。

 正直な所、あのプラハの道沿いの歩いて10分ぐらいの距離の間に、別の駅があろう可能性なんて、思いつきもしませんでした。

 

 ずいぶん後から知ったのですが、このプラハ・マサリク駅というのは「世界の車窓から」でも、取り上げられるほどの駅で、このプラハの地にできた、最初の鉄道の駅らしいです。

 

 EC275の電車の座席にゆったり腰掛けながら、さっきの失敗を反省していました。

 

 ヨーロッパの電車は、基本4人掛けで一つのブースのようになっていて、2人ずつが向き合って座ります。

 そして、初対面の人同士が向き合った椅子に座ると、あいさつをしたり、世間話が始まったりして、和気あいあいとなります。

 

 これは僕も、パリに行った時に経験済みで、その時は僕もたくさんの外国の方から、フランス語で話しかけられました。

 (2012/3/5パリブログ 「雨のパリと凱旋門」 参照)

   …何一つとして、まともに答えられなかったけど…

 

 僕の横に座っている男性と、僕の目の前に座っているカップルは、初めて会った間柄なのに、缶ビールで乾杯をしていました。

 

 僕には、心に余裕がなかったせいか、ちょっとその輪の中には入っていけなかったのですが、こういうのもいいものだなあ… と思いました。

 

 僕はうつむきながら、さっきコンビニで買ったサンドイッチを食べました。

 そんなに日本人に合うような味ではありませんでしたが、腹ごしらえには十分でした。

 

 そして昨日、草さんからアドバイスされた事を、頭の中でイメージしていました。

 

「行く場所は、ブルノの『グランドホテル・バスステーション(Bus station at the Grand Hotel)』という所です」

「住所からして、ブルノで携帯を失くした辺りにあった、あの大きなグランドホテルの中ではないかと思います」

 

「担当者は、アデラさんという人ですから、この人につないでもらうのが良いでしょう」

 

「受付の人に何て言ったらいいか、なるべく簡単な英文を書いておきますね」

 

 そう言って、草さんは、紙にスラスラと英文を書いてくれました。

 

 

“Actually I lost my mobile phone, and I recieved your email.”

(実は、携帯電話を失くしてしまい、こちらからメールを受信しました)

 

“I heard my phone is in bus station Grand”

(私の携帯電話が、このバスステーションにあると書いてあったのですが…)

 

 草さんは、英語の発音のフリガナも振ってくれたので、僕は心の中で、何度もこの2つの文章を復唱しました。

 

 僕の為に、ここまで親身になって、本当にいろいろとしてくださった草さん…

 僕もこれに応えるべく、まずは、ちゃんと携帯を取り戻したら、草さんに恩返しをしなくては…

 

 そんな事を思いながら、僕は、自分がどの駅で下りるのか確認しておこうと、電車の中の電光案内板を見ました。

 

 下りる場所は、もちろんBrno(ブルノ)…

 

 ところが何と「Brno(ブルノ)」という単語が入っている停車駅が、2つもあるんです。

 

 一つは“Brno-Židenice”という駅で、もう一つは“Brno dolní nádraží”という駅です。

 

 この2つの停車駅は、並んでいるので、どちらもブルノ市内にある駅だと思って間違いありませんが、はたして、どっちの駅に下りて良いのか、見当がつきません。

 

 携帯電話さえあれば、草さんに電話して聞く事もできますし、ネットがつながれば地図を調べる事もできるのでしょうが、この状況に置いてそれは無理ですし、言葉が通じないので、誰かに聞く訳にもいきません。

 

 となると、僕に残された唯一の方法は、2分の1の運に任せて、どちらか一つを選ぶしかない…

 

 僕は躊躇なく、後者の“Brno dolní nádraží” の方を、選びました。

 理由は、プラハ本駅(Praha hlavní nádraží)と同じように、“nádraží”という言葉がついていたからです。

 

 “nádraží” という言葉が、どういう意味かは分からないけれど、きっと、こっちがメインの駅に違いないだろうと、僕は考えました。

 

 後で調べてみたら、“nádraží” という単語には、ただ「駅」という意味しかなかったのですが、結果的に、この選択は正解でした。

 

 あの時、もしも、“Brno-Židenice(ブルノズィデニツェ)” を選んでいたら、目的地からとんでもなく離れた場所に下ろされていて、そこからは歩く事はもちろん、無事に元の場所まで戻ってくる事さえも、不可能だったと思います。

 

 後から、いろいろ調べてみると、「ブルノ本駅(Brno hlavní nádraží)」というのも、ちゃんと存在はするようなのですが、今は駅が改修中で、電車はそこに停車しないようになっていました。

 

 “Brno dolní nádraží” に下りてみると、雨が降っていました。

 やがてそれは、ザーザーぶりの土砂降りになってきました。

 

 

 こうして地図で見てみると、“Brno dolní nádraží” のブルノ下駅から、そのバスステーションまでは、かなり距離があった事が分かります。

 

 もちろん、この時は地図なんて持ち合わせていませんから、歩きながら、その辺にいる誰かをつかまえて、道を聞いて、進んでいくしかありませんでした。

“Where is the Grand Hotel?” (グランドホテルは、どこですか?)を繰り返して、何人もの道行く人のお世話になりました。

 

 もちろん、中には「そんな場所は、知らない」という人もいましたし、「ずいぶん、ここから遠いよ」みたいに教えてくれた人がいましたが、指で示してくれている方向へ向かって、ただ、ひたすら歩きました。

 

「レフト」は左、「ライト」は右、そして真っすぐは「ダルビッ」…

 そのあたりの言葉も、だんだんわかってきました(笑)

 

 途中、間違った道に歩いていってしまった事もありましたが、1時間ぐらい歩き続けて、無事にグランドホテルに到着…

 

 

 さっきまで降っていた雨は、いつの間にか、晴れ渡っていました。

 

 ホテルの中に入って、ラウンジの人に、バスステーションの場所を聞くと、またしても、出口の自動ドアの外を指さされ、真っすぐに行くように言われました。

 

 プラハの駅でも、このパターンはあったので、「またか」と思いながら、今度は素直にそれに従って、出口を出て真っすぐに歩いていくと…

 

 

 ついに、目的地の「REGIOJETのバス・ステーション」に到着…(涙)

 

 さあ、勇気を出して、受付の人に聞いてみます。

 

「アクチュアリー アイ ロスト マイ モバイル…(Actually I lost my mobile…)」と言うと…

 明らかに、「何?」みたいなニュアンスで、チェコ語で聞き返されました。

 

 僕の英語は、全然通じていないようです。

 

「ホエア イズ アデラ?(Where is Adela? = アデラさんは、どこですか?)」と聞いてみても、通じません。

 

 僕は、顔が真っ青になりました。

 僕の英語の発音が、余程にまずいのか… それとも、この受付の女性は、英語を理解できないのか…

 

 もうこうなったら、最後の手段しかないと思い、草さんに書いてもらった紙のメモを、そのまま受付の人に渡して、さらに「マイネーム イズ フトシ アサノ(My name ie  Futoshi Asano.)」を、繰り返しました。

 

 受付の人は、どこかに電話をして、草さんの書いてくれたメモの単語や、一文字一文字のスペルを伝えていました。

 

 およそ、10分ぐらい…

 受付の人は、机の引き出しをゴソゴソと探し、何かを取り出しました。

 

 それは、紛れもなく、僕の緑色の携帯電話!!

 

 

 しかしながら、何か良く分かっていないような感じで、「本当に、外にいる怪しげな外国人に、この携帯を渡していいの?」みたいな顔で、こちらをチラチラ見ながら、ずっと電話で話しています。

 

 僕は、パスポートを広げて見せて、「イッツ マイン(It’s mine.)」を繰り返しました。

 

 その5分後、パスポートをコピーする事と引き換えに、ずっと探し求めていた携帯電話を、再び手にする事ができました。

 

「サンキュー ベリーマッチ!!(Thank you very much)」

 

 携帯の電池の残量は、本当に残りわずか…

 まずは、高天麗舟先生に、携帯を無事に取り戻した事を一報しました。

 

 高天麗舟先生からは、おめでとうの言葉とともに、「みんなでプラハ駅まで迎えに行くので、プラハ駅の喫茶店で待ち合わせしましょう!!」と、メッセージが入っていました。

 

 携帯の電源は、いつ切れてもおかしくないくらい、バッテリーが消耗していたので、「省エネモード」にして、一番確実にプラハに戻る方法を、考えました。

 

 鉄道を使うには、1時間近くかけて、“Brno dolní nádraží(ブルノ下駅)”まで、さっきの道を戻らなくてはいけませんが、また、今度も無事に、あそこまでたどり着ける保証はありません。

 

 ふと、後ろのREGIOJETの看板を見ると、「JÍZDNÍ ŘÁD Brno – Praha」と書いてあります。

 

 このバスで、プラハまで戻れるかも知れない…

 

 僕は、さっきの受付の女性に「I want to go to Praha.(私は、プラハに行きたい)」と言いました。

 

 受付の女性は、「ウ ハンドレッド コルナ」と答えました。

 

 よく分からないけれど、多分、「100(hundred)」と「コルナ(Koruna)」と言っているから、100コルナという事だろう… と、おそるおそる100コルナ札を差し出すと…

 

 「ツゥー ハンドレッド コルナ(Two hundred Koruna)」と、思い切り強く言われました。

 

 あわてて、もう1枚100コルナ札を差し出すと、今度は…

 

 「ワノクロック!!」と、強く言われました。

 

 どうして良いかわからずに、もう1枚100コルナ札を差し出したら、「ノー!(No!)」と、叱られてしまいました…

 

 困ったなあ… と思っていたら、受付の人はバスの切符に、マーカーで線を引っ張ってくれて、渡してくれました。

 

 

 見ると、13:00の所に、緑のマーカーで線が引っ張ってありました。

 

 そうか、ワノクロックは「one o’clock」の事だったんだ。

 

 13:00まで、30分ぐらい…

 歩き疲れて、甘いものが無性にほしくなったので、コンビニでコカコーラを買って飲みました。

 

 

 しばらくすると、そのバスはやってきました。

 

 長かったな… でも、これでやっとみんなの元に帰れる…

 

 バスに乗ると、バスガイドさんから、運転手さんのすぐ後ろの広くて見晴らしの良い席に案内されました。

 

「サンキュー ソー マッチ!!(Thank you so much)

 

 全ての事が、結果的には上手くいったけれど、どこを一つ間違っていても、戻ってこれなかったな…

 広々とした席で、ゆったりと目を閉じて、ただただ、天に感謝しました。

 

 <旅の教訓34>

 一見困難に思える事も、あきらめなければ、うまくいく。ただし、油断はしない事… そして、うまくいった時には、絶対に感謝を忘れない事。

 

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