2019.07.012019年 ヨーロッパ紀行 第32話 ~クラシックな夜~

2019年7月1日(月)

 

 (In Prague Czech Republic Date  19 May 2019)

 

 草さんと一緒に「弦楽四重奏」の演奏があるミラーチャペル・クレメンティヌム(Mirror Chapel Klementinum)に到着すると、ヒデ君が玄関の所で待っていてくれました。

 

 

「もーう、遅いですよ…」

 

 どうやら、僕の腕時計が、15分ぐらい遅れてしまっているようでした。

 いつも、携帯で時間を確かめていたから、まさかそんなに、時計が遅れているとは、夢にも思いませんでした。

 

 草さんとヒデ君に、申し訳ない事をしてしまいました。

 

 でも、幸いに演奏の時間には、ギリギリ間に合ったようです。

 

 

 泰永会のメンバーは、みんな、もうすでに会場の席についているようでした。

 

 コンサートの題目は、「古きプラハの スメタナ、ドボルザーク、そしてビバルディー」(Smetana,Dvorak and Vinaldi in Old Prague)

 

 ストリング・カルテット(弦楽四重奏)ですから、基本的には4名の演奏なのですが、音の厚みがすごくて、巨大オーケストラの演奏と変わらないくらいのボリュームでした。

 

 初めて、オーケストラの生演奏を聴きました。

 

 会場に入って、厳粛な場で緊張したせいか、急に喉が痛くなって、咳込みそうになったのですが、僕はじっとこらえていました。

 

 それにしても、モルダウの曲が演奏の中に含まれているとは、夢にも思いませんでした。

 

 モルダウ川を見下ろして、脳裏に焼き付いた状態で、生演奏のモルダウを聞く…

 なんて、贅沢な時間なんだ… と、心が躍りました。

 

 クラシック演奏の珠玉の時間が終わって、ミラーチャペルの外に出てくると、夜のプラハ…

 

 

 そこは、幻想の世界でした。

 

 野尻泰煌先生高天麗舟先生、草さんは、本当に心の底から、演奏の感動を味わっているのを感じました。

 

 僕は、そこまでの深い何かを感じ取った訳ではありませんが、とにかく気持ちは充実していました。

 やや、体調が悪くて、咳をこらえていたので、パーフェクトな状態ではなかったものの、本当に良い体験をしました。

 

 その後、トラム(路面電車)を使ったのか、徒歩だったか、どうやってアパルトマンに帰ったのかが、ちょっと思い出せないのですけど、夜道を歩いている間、ずっと心の中でモルダウの曲が流れていたのを覚えています。

 

 アパルトマンに戻って、草さんがパソコンを見ると、携帯の失くし物の問い合わせをしたレギオジェット(Regiojet)から、返信が来ていました。

 

 なんと、僕の携帯電話がバスの中で見つかって、今、ブルノのグランドホテル・バスステーションで預かっているとの事…

 

 あまりの嬉しさに、ガッツポーズを取ってしまいました。

 

 草さんをはじめ、助けてくれたみんなに本当に感謝です。

 

 でも、携帯電話がある場所はブルノ…

 ここはプラハです。

 

 我々は、明日の朝に帰国しなければなりませんから、携帯をプラハに届けてもらっていては、間に合いません。

 

 残された選択肢は2つ…

 その携帯を日本に海外小包で届けてもらうか、それとも明日、片道2時間半 往復で5時間掛けて、僕一人で、ブルノに携帯を取りに行くかです。

 

 僕は、迷う事なく、後者を選びました。

 

 日本に戻ってから、携帯が送られてくるのを待つというのでは、一体いつになるかもわかりませんし、本当にちゃんと送られてくる保障もありません。

 何せ海外の事ですから、住所を間違って送られたら、それで終わりです。

 

 もちろん、たった一人でブルノに行くというのが、かなり危険極まりない事も、承知の上です。

 なにせ、僕は携帯を持っていないのですから、万が一、道に迷ったりしたら、言葉も通じないこのチェコで、二度と戻ってこれなくなる可能性だってあります。

 

 とはいえ、これ以上みんなに迷惑を掛けられません。

 例えば、「草さんにブルノまで、つき合ってもらう」とか、一瞬、そんな考えを頭の中をよぎったのですが、そんな事をすれば、草さんの貴重なチェコ滞在の一日が消えてしまいます。

 

 野尻先生が誘ってくださった、モルダウ川の向こう側のお城にみんなで行くのも、本当に魅惑的ですが、それに参加するのはあきらめて、僕は単身ブルノに行く事に決めました。

 

「きっと、それも意味があるんだろうね。気をつけて行っておいでよ」

 僕が明日、単身ブルノに行く事を告げると、野尻先生はそういってくださいました。

 

 草さんは、現地に行ったら、どういう風に自己紹介したらいいかとか、事細かくメモに書いてくださいました。

 

 海外旅行に百戦錬磨の草さんからしてみたら、たかだかプラハからブルノに行って携帯電話を取りに行く程度の事は、大した事ではありません。

 

 それよりも、草さんは今夜、このプラハの夜の街を、一人で観光に行くかどうか迷っているようでした。

 

 草さんが、一人で「スリーカード・スプレット」をやって、じっと悩んでいました。

 

「これって、どう考えても “行くな”っていうメッセージですよね」

 草さんが、出たカードを僕に見せてくれました。

 

 

 「世界」「悪魔」「月」…

 めちゃくちゃ、分かりやすいカードの出方です。

 

 今、クラシック演奏に心が最高に充実している状態が、きっと「世界」のカードですよね。それで、もしも行くと「悪魔」のカードになって、その後は「月」のような心の状態という事ですね。

 

 もう、これだけの解説で、草さんには十分なようでした。

 

 でも、実業家で現実的な草さんの事だから、どうせ止めても行くんだろうな… と、この時は思っていました。

 

 ヒデ君がインターネットを駆使して、ブルノまで行くには、どの電車に乗ったらよいかとか、全部調べてくれて、そのメモを僕にくれました。

 ヒデ君には、本当にお世話になりっぱなしです。

 

 キッチンに行って、咳き込んでいたら、相模泰生先生が、風邪薬を持ってきてくれて、手渡してくれました。

 

 こうやって、いつもみんなに助けてもらって、僕は生きているんだなあ…

 

 感謝の気持ちが、心の底からこみ上げてきました。

 

 ヒデ君の調べてくれた電車では、7:50にプラハ発の電車に乗れば、10:30にブルノに着くとの事…

 

 という事は、かなり早起きしなければなりません。

 

 泰生先生からもらった風邪薬を飲んで、その日はさっさと床に入りました。

 

 <旅の教訓32>

 いつだって周りの人のお世話になって、人は生きている。

 

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