2019.06.272019年 ヨーロッパ紀行 第28話 ~野尻先生のおばあちゃんの教え~

2019年6月27日(木)

 

 (In Brno Czech Republic Date  18 May 2019)

 

 草さんが、パソコンを使って、高速バスのレギオジェット(Regiojet)のコンタクトフォームにあるメール・アドレスから、メールボックスを開くと、さらさらと手際よく、英語の文章をタイプしてくれました。

 

 そして、さっきの松里さんの写真をパソコンの中に取り込んで、携帯電話が席のテーブルの上に乗っかっている部分だけを切り取って、そのメールに添付しました。

 

 その英文の日本語の訳を、僕に教えて下さったのですが、とても好感が持てる、バス会社の方を思いやった素敵な文章でした。

 

「これなら、携帯電話が出てくるに違いない…」

 僕は、そう確信しました。

 

 仮にもし、それでも出て来なかったとしても、草さんをはじめ、周りの人にただただ感謝するのみ…

 

 そう思うと、気持ちがパッと明るくなりました。

 

 外はまだ、明るいです。

 壁に掛かっていた時計が止まっていたので、今が何時かは、さっぱりわかりませんが(笑)

 

 みんな、外へ買い物に行くと言って、こぞって出掛けていきましたが、僕は、体調が今一つだったので、部屋にいる事にしました。

 

 部屋に残っているのは、野尻泰煌先生と僕の二人だけです。

 

「浅野さん、風邪ひいたかい」

 野尻先生は、そう言うと、優しく僕の額に手を当ててくださいました。

 

「熱はないようだね。まあ、我々はそんなに若くないんだから、のんびり休みながら、楽しもうよ」

 

 

 その後、野尻先生は、昔話を語ってくださいました。

 それは、野尻先生のおばあちゃんが、野尻先生に話してくれた素敵な言葉…

 

 野尻先生のおばあちゃんは、まだ小学生だった頃の野尻先生に、こんな事を、教えてくれたそうです。

 

 まず1つ目は「曲がった事はしないで、真っすぐに生きなさい」という事だそうです。

 

 例え、人が見ていなくても、ズルい事はしないで、損得で生きるのではなく、正しい道に生きるという事が大事だよと…

 そんな事を、おばあちゃんは、小学生の野尻先生にいつも言っていたそうです。

 

 そして、「もしも、一生に一度でいいから、言いにくい事を自分の為に言ってくれるような人に出会う事ができたなら、それは、本当に幸せな事だよ」

 と、おっしゃっていたそうです。

 

 それはきっと、おばあちゃんが今まで経験した人生の中から培った、貴重な体験談なのでしょう。

 

 野尻先生のおばあちゃんですから、まぎれもなく戦前の生まれである事だけは、確かだと思います。

 そして、今でもきっと、野尻先生を遠くから見守ってくれているに、違いありません。

 

 昔ながらの江戸っ子で、野暮な事が大嫌いで、「粋(いき)っていうのは、帰りがないんだよ」と、華やかな笑顔で、冗談を言う女性…

 

 僕は当然、野尻先生のおばあちゃんには会った事はありませんが、そんなイメージが伝わってきました。

 

 2つ目は、「いつも中庸で生きなさい」という事…

 

 おばあちゃんは、常に中道であるように、という事を、野尻先生におっしゃっていたそうです。

 そして、着飾ったりしないで、素のまんまで、土俵に上がりなさいと…

 

 確かに、今の野尻先生を見ると、本当に飾り気がないというか、おばあちゃんの言葉の通り生きていらしたんだなあ… と思いました。

 

 そして、おばあちゃんのお話の中で、僕が一番感動したお話は、次の「枡(ます)」のお話でした。

 

 「人間の人生には “一合枡” もあれば “五合枡” もあれば、 “一升枡” というのも、あるんだよ。でも、これは、人生のフタを開けてみなければ、わからない…」

 

 おばあちゃんは、小学生の野尻先生に向かって、「お前は、“一升枡” を持っているような気がする」と言いました。

 

 そして、おばあちゃんは、自分の事をこう言ったそうです。

「私の人生は、“一合枡” だったね…」と。

 

 こんなにも、スケールの大きな野尻先生のおばあちゃんが、一番小さな「一合枡」の人生というのは、謙遜し過ぎているようにも感じるのですが、おばあちゃんは、こう続けました。

 

「自分がどんな大きさの枡を持っているかは、その人生のフタを空けてみなければわからない。だから最初は、自分の事を “一升枡” だと思ったらいいんだよ」

「それで、もしも、自分は “一合枡” に過ぎないという事に気づいたなら、それにガッカリしたりしないで、 “一合枡” の中で自分の人生を生きる事が、人間の最大の美徳なんだよ」

 

 おばあちゃんの言葉の言い回しは、ちょっと僕なりに想像して書いていますが、本当に、粋なおばあちゃんだと思いました。

 

 そして、そのおばあちゃんの話をしている野尻先生は、とても優しい目をしていました。

 

 玄関のドアが開いて、ワイワイと話し声が聞こえてきました。

 みんなが帰ってきたようです。

 

 気がつくと、外もいつしか夕暮れになっています。

 いよいよ明日の朝は、このブルノを出て、この旅行の最後の目的地であるプラハへと出発します。

 

この後、みんなで夕食を食べて、ゆっくりと休み、明日の旅路に備えました。

 

 <旅の教訓28>

 自分の人生を、自分に与えられた枡の中で、自分らしく精一杯生きる。

 

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